エポキシ樹脂 アレルギー
1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂状物質の総称であり,通常は硬化剤(フェノール,アミンなど)と併用して3次元網状ポリマーを形成させて利用する.特性として接着性に優れ,硬化時の体積収縮が少なく,強度と強靭性,電気特性に優れ,硬化中に放出される揮発分がないことなどがあげられる。
ポイント
・未硬化のエポキシ樹脂、硬化剤、希釈剤(反応性希釈剤)への皮膚接触をまず遮断
・作業は換気・局所排気を併用し、皮膚に付いたら直ちに石けん+流水で洗浄(溶剤こすりは不可)
・医療機関や職場では「エポキシ陽性」を申告し、材料のSDSで成分を確認
注意する製品・場面(代表例)
■産業・DIY
・二液型エポキシ接着剤・コーティング、床材・塗床、FRP、電気・電子封止材、3Dプリント後処理のコーティング
■日常・趣味
・レジンアート・アクセサリー制作、釣り具のコーティング、スノボ・自転車・楽器の補修
■医療・歯科・工学
・歯科材料や補綴工程の一部、カーボン複合材の含浸・修理
避ける・注意する成分名(ラベル・SDSでの表記例)
■エポキシ樹脂本体
・Bisphenol A/F 型エポキシ(Bisphenol‑A/F diglycidyl ether、BADGE/BFDGE)
■硬化剤(アミン系など)
・ポリアミン・ポリアミド、トリエチレンテトラミン(TETA)、ジエチレントリアミン(DETA)、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンジアニリン(MDA など)
■反応性希釈剤(感作性が高い)
・グリシジルエーテル類(C12–C14 アルキル、フェニル、クレシル glycidyl ether 等)
■関連表記
・Epoxy resin、Epoxide、Reactive diluent、Amine hardener、Curing agent
交差・関連の注意
・同じ「エポキシ樹脂群」やグリシジルエーテル希釈剤で相互感作しやすい
・アミン硬化剤(TETA/DETA/IPDA 等)単独でも感作源になり得る
・ロジン(松脂)系、フェノール樹脂(PTBP‑F)、アクリレート系に併存感作がみられることあり
回避と代替のコツ(作業安全)
■手袋
・ニトリルは短時間用途向け。長時間・高濃度はラミネート手袋(多層バリア)やブチルを検討
・綿インナー+外側に使い捨て(ダブルグローブ)で汗・浸透を減らす
■皮膚・衣類
・前腕・手背の露出を避ける。袖口をテープ留めし、汚染時は即交換
・飛散防止に低速混合、密閉容器を使用。硬化中は触れない
■代替
・水系エポキシや低感作性配合への切替を検討(ただし完全に安全ではないためSDS確認は必須)
家庭・趣味での工夫
・作業は短時間・少量・良好換気。作業面は使い捨てシートで養生
・皮膚付着は拭き取りではなく速やかな洗浄。溶剤擦りは皮脂バリアを壊して悪化
ラベルでの見分け方(記載例)
・成分欄やSDSに「Epoxy resin(number average MW ≤700)」「BADGE」「BFDGE」「Glycidyl ether」「Amine hardener」
・危険有害性:Skin Sens. 1、H317(皮膚感作)などの表示があれば特に注意
よくある落とし穴
・「完全硬化後は安全」と思い素手で早期に触れる(未反応成分が残存しうる)
・ニトリル手袋の過信(長時間で浸透)。同じ手袋を使い回す
・汚染エリアのスマホ・工具に触れ、二次曝露
・レジンアートの研磨粉じんを素手で掃除(皮膚・眼・吸入曝露)
使う前のミニテスト
・新製品はSDS確認の上、短時間・限定部位で試す。皮膚に症状が出たら中止
・職業では職場の産業医・衛生担当とPPEと工程見直しを実施



